電子書籍の衝撃
佐々木俊尚さんの、電子書籍に関する新書です。
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
posted with amazlet at 10.05.21
佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 80
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 80
電子書籍に対してそれほど関心がなかったのですが、佐々木さんの著書ということで早速購入しました。この本を読めば、紙の本から電子ブックへの大きな変化がすぐそこまでやってきてることが分かります。
電子ブックを読むためのデバイスである、Amazon の「キンドル」やiPad などの、いわゆるプラットフォームが米国ではビジネスとしてすでに立ち上がり始めていること、それにより日本の出版業界が電子ブックに一気に加速する可能性があること、出版社の大小、あるいは個人などの格差がなくなり、簡単に電子ブックへの出版が可能になること、ソーシャルメディアの出現により、個人が本当に読みたい本を探せるようになることなどを、順序立てて分かりやすく解説されています。また、日本における書籍の流通に関する歴史を踏まえながら、その問題点についても指摘されています。
文章が「です・ます調」で書かれているので柔らかい印象を受けますが、内容は佐々木さんの鋭い視点で書かれています。
手紙の文化は決してなくなることはないけれども、人から人への文字による伝達手段が電子メールに移行したように、紙の本は決してなくならないけれども、活字により体系化された情報の伝達手段の多くが電子ブックに移行する日もそう遠くないかもしれません。
300ページとやや厚めで、読み応え充分です。刊行されてから割と早く購入したつもりですが、3刷でした。かなり日が経ってから読んだので、さらに重版されていると思います。
以下、目次です。
- 第1章 iPadとキンドルは、何を変えるのか?
- 姿勢と距離から見る、コンテンツとデバイスの相性
- キンドルの衝撃
- これ以上ないほど簡単な購入インターフェイス
- 物理的制約を離れ、膨大な数の書籍の購入が可能に
- ハードカバーの約三分の一という戦略的低価格
- 複数のデバイスで読書が続けられる仕組み
- 「青空キンドル」? 日本語の本はまだだが…
- 「ヌック」「ソニーリーダー」…百花繚乱のアメリカ・ブックリーダー
- アマゾン・キンドル最大の対抗馬、アップルiPadの登場
- iPadが有利なこれだけの理由
- iPadが不利な三つの点
- 決め手は、プラットフォーム
- 電子ブックによって本は「アンビエント」化する
- ここまで進んでいる音楽のアンビエント化
- そして、情報のマイクロコンテンツ化へ
- 本のアンビエント化の先にあるものは?
- 第2章 電子ブック・プラットフォーム戦争
- ベストセラー作家が電子ブックの版権をアマゾンに
- 電子ブック、ディストリビューターの広がり
- 出版社の勝算なき抵抗
- そして、アップルiPad の参入
- マイクロソフトから始まったプラットフォームビジネス
- 音楽のネット配信、テクノロジー業者とレーベルとの戦い
- アップルiTunesミュージックストアの登場と勝利
- 音楽業界におけるアップルのプラットフォーム戦略を完全にコピーして挑んだキンドル
- アマゾンのホールセール契約を覆させたアップルのエージェント契約戦略
- アップルは出版社にとって、ホワイトナイトか?トロイの木馬か?
- メディア同士のアテンションエコノミーの戦いの中で
- グーグルブック検索の参入
- グーグル和解問題は、日本の出版業界でも大騒動に
- グーグルは何を狙っているのか?
- 出版社連合の電子ブック・プラットフォーム構築の失敗
- わずか二年で失敗した、日本の「電子書籍コンソーシアム」
- 著作権二次使用権の問題
- 取次中心の業界のしがらみから脱却できず
- そして、書き手の参入へ
- 第3章 セルフパブリッシングの時代へ
- アマゾンで、だれでも書き手の時代到来!?
- ISBNコードを取得する!
- アマゾンDTPに、アカウントを登録!
- 原稿をアップロードする!
- 電子書籍は出版文化を崩壊させるのか?
- アマゾンでのセルフパブリッシング、オンデマンド印刷も
- プロモーションはどうするか? マーケティングの新しい潮流
- 楽曲のセルフ・ディストリビューションに挑むまつきあゆむさん
- マスモデルは緩やかに崩壊へと
- 記号消費-モノですべてを語った時代
- 記号消費の時代、音楽シーンで起こっていたこと
- 記号消費の終焉へ
- ネット配信が音楽の好みの細分化を加速させる
- 従来のアーティストの収益モデルの崩壊
- ソーシャルメディア時代を生きるスキル
- 有名人気アーティストも
- セルフ・ディストリビューションは、音楽をいかに変えたか?セルフ・パブリッシングは、出版をいかに変えるか?
- マイスペースで、三週間で二〇〇〇万人!無名ロックバンド、「ハリウッド・アンデッド」の場合
- 巨大レーベル主導から零細ミュージックカンパニーへ
- 音楽業界の主流は、三六〇度契約へ
- 電子ブック時代の出版社は?
- 第4章 日本の出版文化はなぜダメになったのか
- 若い人は活字を読まなくなったのか?
- ケータイ小説本がなぜ売れたか?
- ケータイ小説は、コンテンツではなくて、コンテキスト
- それは、ヤンキー文化と活字文化の衝突だった!
- 流通構造の問題を探る。再販制のはじまり
- 委託制と書籍と雑誌の流通の融合のはじまり
- いまも引き継がれる流通プラットフォームの問題点
- 一九九〇年代まで出版界が好調でいられた本当の理由
- 壮大なる自転車操業と本の「ニセ金化」
- 「出版文化」という幻想
- 守られるべきものとは何か?
- 終章 本の未来
- 電子ブックの新しい生態系
- 書店の中にコンテキストをつくった往来堂書店、安藤哲也さん
- なぜ、未来の書店像として広まらないのか?
- 電子ブックは、結局ベストセラー作家だけが売れる?
- 食べログとミシュラン、あなたにとって有益な情報は?
- マスモデルに基づいた情報流路から、ソーシャルメディアが生み出すマイクロインフルエンサーへ
- すでに始まっているマイクロインフルエンサーによる本のリパッケージ
- 多くのマイクロインフルエンサーと無数のフォロワーが織りなす未来の本の世界
- 本と本の読まれ方はいかに変わっていくか?
- コンテンツからコンテキストへ。ケータイ小説が読まれる理由
- ソーシャルメディアの中でのコンテクスト構築がこれからの出版ビジネスの課題
- そして、読書の未来に
Posted by yujiro このページの先頭に戻る
- 2011年新聞・テレビ消滅
- 記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争
- 「朝5分」で健康になりなさい! & プレゼントのお知らせ
- 世襲議員のからくり
- 魔法使いの台所
- ジャーナリズム崩壊
- B型自分の説明書・A型自分の説明書
トラックバックURL
コメントする
greeting