100万人から教わったウェブサービスの極意 ~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点
「モバツイ」の開発に関わる書籍の紹介です。著者の藤川真一さん(えふしんさん)から技術評論者様経由で献本いただきました。ありがとうございました。
技術評論社 (2012-01-04)
「モバツイ」をご存知ない方はいないと思いますが、改めて紹介させていただくと、ツイッターをケータイやスマホなどで閲覧するためのウェブサービスです。2007年に開始し、現在の登録者数は150万人だそうです。
多くのウェブサービスが存在する中、モバツイは成功した数少ないウェブサービスのひとつと言えるでしょう。本書はそのモバツイの開発者であるえふしんさん自ら、ツイッターがどうしてメジャーになれたかといった分析や、モバツイのサービス開始から現在に至るまでに開発を通して感じたことが綴られています。
また、モバツイのユーザー数の増加やプラットフォームであるツイッターの障害によってさまざまな問題が発生し、それらに対してどのようにして対応、あるいは乗り越えてきたかというノウハウも記されており、ウェブサービスを作りたいと思っている人、あるいはすでにウェブサービスを運用されている方にとって、非常に参考になるのではないかと思います。
全体を通して、えふしんさんのツイッター・モバツイに対する想いの深さが読み取ることができると同時に、端々にえふしんさんの細やかな気遣いが感じられる、好感のもてる文章です。
以下、目次です。
- 第1章 僕の起動はウェブ2.0からだった
- ウェブ業界も製造業と同じ道をたどってきた
- 知らず知らずのうちにプラットフォーマーの傘の中に
- フロンティア精神から,ガチッとした構造の時代へ
- 多くの屍の中で成功するデザインパターンが生まれた
- ウェブ2.0は瞬間風速のバズワードではない!
- 新たなサービスは「組み合わせ」と「仕組み」から生まれる
- トップをめぐる争いは新たな舞台の上でずっと続く
- 第2章 ツイッターがメジャーになった理由の僕なりの分析
- シンプルなようで意外と複雑なツイッター
- リアルタイムのように見えて実は"非同期同期"
- おっさんのモバゲーになったのは大人にとって心地よかったから
- 有名人や芸能人とも相性がよかった
- ボケとツッコミの関係から,徐々に緊張が高まるように
- 半年で飽きると思われていたツイッター
- 再発見されたツイッターの強み,抱えている弱み
- 「非公式リツイート」のドタバタで僕が考えたこと
- 大震災でツイッターが果たしたプラスとマイナスの役割
- 小さく小さく分断された世界の集合体
- 企業アカウントが「擬人化」されてファンを集めることも
- ツイッターとマーケティングのハッピーなかたちを探して
- ラベルに過ぎないハッシュタグにも人の感情がこもっている
- 第3章 主戦場のモバイルで、今思うこと
- モバイルは「普通のユーザー」にとってのインターネットへの入口
- 大きく成功したのは"一般人"向けのケータイインターネット
- ガラケービジネスはスマートフォンビジネスに置き換わる
- 猫も杓子もスマートフォンでは,携帯デバイスの本質を見失いませんか?
- 今の楽しさが求められるから,携帯と相性がよかった
- イベントから吐き出されるものをシェアする役目
- つながりにくさの中で生まれた発想
- スマートフォンの甘く危険なニオイ
- スマートフォンをめぐる争い 現場の見方は?
- ブツ切れだったネット同士が融合していくと
- 第4章 モバツイの開発を通して僕が実感したソーシャル
- やらない理由はいくらでもある中で,「やってみよう」と思えた
- 本当にうれしかった"ソーシャルデバッグ"の経験
- 爆発的にユーザー数が増える一方で寂しさもあった
- 成長したサービスには二通りのユーザーがいる
- 一定のサイズになればユーザーからの反発は必ず起きる
- 「やるなら早いうちに」は本当のこと
- 第5章 一人で始めたサービスがここまで大きく育った理由
- 毎日使ってくれる10人をスタートの拠点に
- レッドオーシャンに参入してはいけない?
- お互い顔が見えている時期にやるべきこと
- どんなウェブサービスにも当てはまる「笑顔と感動」
- いつも頭に入れている仕様変更のときの心構え
- 手応えがほしい その気持ちから寄付を募る
- 僕がアマゾンEC2を選んだ理由
- 二つの賞の受賞は続けてきたことへのご褒美
- なぜ150万人のサービスに育ったのか,理由は三つしかない
- 第6章 どうする!?プラットフォームとの距離感
- プラットフォームに乗ること,プラットフォームを作ること
- 集客動線に紐づくゆるい関係のプラットフォーム
- 携帯電話,スマートフォンの独自の利用シーンから成るプラットフォーム
- SNSによる人間関係をベースにしたプラットフォーム
- プラットフォームとしてはパワー不足が否めない
- イノベーションを狙うニューカマー
- どの針路をとるにしても最後はあなた次第
さて、書籍の後半で、えふしんさんはモバツイが成功したポイントとして、次の3つに集約されています。
- プラットフォーム(ツイッター)が好きであること
- サービス(モバツイ)を作ってみたいと思うこと
- 作ったサービスを継続すること
ツイッター自体がサービスとして大きく成長したという要因も考えられますが、ツイッターの2007年の最初のブームが一旦おさまってから2009年に次の波がやってくるまでに、モバツイはウェブサービスとして継続されていたことは大きいのではないかと思います。つまり、国内ではモバツイの存在がなければここまで発展しなかったのではないでしょうか。
紹介の最後に、印象に残ったフレーズを引用させて頂きます。
つぶやきの一つひとつは ~略~ たとえどんなにたわいのない一言だったとしても、誰かに読んでもらいたいという思いが込められているものです。~略~ 一つひとつのつぶやきを大事にして、それを一人でも多くの人に読んでもらいたいと思っています。大量のつぶやきをさばくことよりも、一つひとつのつぶやきをより高い表現力で閲覧できること、これがモバツイの目指すところです。(P.198)
この部分を読んで、「モバツイはなんて素敵なサービスなんだろう!」と思いました。
ということで、陰ながらモバツイのさらなる発展を期待しています。
- 週間ダイヤモンド「ツイッターマーケティング入門」
- Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流
- Twitter革命
- ツイッター 140文字が世界を変える